こんにちは!
新酒のワイン好きの方にとって毎年秋も深まる時季は、新酒が解禁される日が待ち遠しいものですよね。
本日は日本ではあまり知られていない、オーストリアの新酒ワインを楽しむ「ホイリゲ」文化と、9月、10月限定のレアな飲み物、
- 発酵途中の低アルコール飲料「シュトゥルム」
- そのさらに発酵前の飲料「モスト」
についてのお話です。
季節限定でしかも現地でしかいただくことができないものですから、この時季に現地をご訪問されるときは、ぜひ楽しんでいただきたいものです。
オーストリアの新酒「ホイリゲ」のワイン
若い新酒ワインを楽しむホイリゲ文化とは
オーストリアでは1年未満のワインの新酒のことを「ホイリゲ」といいます。
またその新酒を提供する居酒屋そのものも「ホイリゲ」なんです。オーストリアでは若いワインを楽しむ文化が根付いているのです。
秋に収穫され仕込まれたワインは、公式には聖マルティン祭の日に解禁です。毎年11月11日がその日。
ホイリゲの歴史
ホイリゲの歴史は、時の皇帝ヨーゼフ2世が1789年に、ウィーンのぶどう農家に対して、「年間300日内に限り自家製ワインの販売と、簡単な食事を提供してもよい」という許可を与えたことに始まりました。
ウィーンのホイリゲ文化は、2019年ユネスコの無形文化遺産に登録されています。
家族経営で受け継がれている、ワインを提供する居酒屋の文化。
- 営業時間の自由な選択
- 自家製ワインの提供
- 個性のある料理やメニュー
などの厳しいガイドラインをクリアしたホイリゲだけが、ユネスコのロゴを掲げることができるそうです。
ホイリゲとは、こんなところ
ホイリゲでは、かすかな微炭酸の辛口白ワインを、ダイナミックにジョッキ型のグラスでいただくのです。
お店の入り口には「営業中」を意味する松の枝の束が、下げられるのが伝統。
食事をしていると「流し」が現れます。ウィーン郷土音楽の「シュランメル」といい、ヴァイオリン、アコーディオン、ギターを演奏するグループが歌って場を盛り上げてくれますよ。
ホイリゲが集中する「グリンツィング」
「グリンツィング」という地域には、こういったホイリゲが多数集中しています。ウィーン中心部からわずか5km離れたところ。
ツアーの食事でよく利用するのも、このグリンツィング地域のどこかしらのホイリゲ。居酒屋の雰囲気が味わえるんです。
ただここは観光化されてしまっている感が否めないのが残念なところ。
個人旅行ならシュタマースドルフがおすすめ
個人的に行かれるなら21区のシュタマースドルフがおすすめです。
ウィーン本来の昔ながらの良さが残る、そんなホイリゲが多く存在する地域ですよ。
「シュトゥルム」と「モスト」は期間限定のレアドリンク!
ホイリゲでは新酒のワインはもちろんですが、他にも美味しい飲み物があるんです。
8月中旬から10月までの期間限定でしか飲めないもの。そして現地でしか飲めないもの。
私のおすすめする、特別なドリンク2種は下記のとおり。
- シュトゥルム Sturm
- モスト most
「シュトゥルム Sturm」
画像提供元:Pixabay
シュトゥルム Sturm とは
「シュトゥルム Sturm」はぶどうからワインへの発酵途中で、飲んでしまおうというもので、ワインの初期の状態。
濁っていて、アルコールは4~6ほどの度数。通常のワインの度数は12~14くらいですので、ぶとうジュースといった飲み口です。
ぶどうの甘さや香りがまだ残っていて、とってもフルーティ。微炭酸の爽やかな飲み物。普段アルコールを口にされない女性にもおすすめですよ。
期間限定のシュトゥルム Sturmはいつからいつまで?
オーストリアのワイン法の法律上は、8月1日から12月31日までの販売になっていますが、通常は9月初旬から10月下旬まで出回ります。1年の中でもこの短い期間にしか飲めないもの。
ホイリゲだけに限らず一般のレストランでもぜひ試してみてくださいね。
季節限定の飲み物のため、
レストランのメニューには載っていないのが普通です。
入り口に「シュトゥルムあります!」といった看板が出ていたり、店内に張り紙がされていたりしますので、この時季に行かれた時は忘れずにチェックしてみて下さい。
たとえ入り口の看板や、店内の張り紙の両方とも見当たらない場合でも、スタッフにお尋ねになってみてくださいね。
もしかしたら在庫が少なくなっているだけかも。お尋ねになるときのために下記のスペルを控えていただくと便利です。
- シュトゥルム Sturm
- モスト most
シュトゥルムを楽しめるのは現地限定その理由
そして現地でシュトゥルムがお気に召したならば、ぜひとも日本にお土産に持ち帰りたいと思われるでしょう。
しかし残念なことに、お土産にはできないのです。
現地でももちろん販売はしているのですが、発酵途中であり、まだ生き生きしている飲み物。
ゆえに栓を完全に閉めてしまうと破裂してしまいますので、半分栓が開いている状態なんですね。
その状態ではスーツケースにも入れられませんので、日本への持ち帰りは不可能。
日持ちもしないため空輸もできませんので、日本の販売店などで購入することも不可能。
したがって現地のみで、楽しんでいただく飲み物なのです。
- シュトゥルムは日本に持ち帰ることは不可能。
- シュトゥルムは日本で購入することも不可能。
シュトゥルム Sturmがいただける他の国
国や地方によってその呼び名が変わります。
【国】
- オーストリア:シュトゥルム Sturm
- ドイツ:
●フェーダーヴァイサー
FederweißerまたはFederweisser
(白い羽の意味→白ワイン)
●フェーダーローター Federroter
(赤い羽の意味→赤ワイン) - チェコ:ブルチャーク BurčákまたはBurcak
【地域】
- フランス語圏スイス:ムー Moût
- ドイツ
バイエルン州北部フランケン地方:ブレムザー Bremser
など。
「モスト most」
アルコールが苦手な方には、シュトゥルムに進むさらに手前状態の「モスト」がおすすめです。
つまりはワインを造るために絞ったぶどうジュースのことですから、ノンアルコール。
中でも「ウィーナー・トラウベ」(商標登録されている)は、厳重に品質管理されたウィーン産のぶどうのみを使用したモストですので、一般的なぶどうジュースとは一味も二味も違いますよ。
ホイリゲがある首都ウィーンは広大な白ワインの産地
オーストリアのワインはそのほとんどが国内消費されているため、日本での知名度は低いと思いますが、地元ではとても人気なんです。
ワイン生産量全体の約80%が白ワイン。
また驚くことに、大都会ウィーン市内がワインの産地になっていることは
意外なのではないでしょうか。
画像提供元:arno-senoner-unsplash
首都に広大なぶどう畑があること自体がレアなこと。
東京ドーム128個分(または東京の狛江市)と同等の広さというのですから驚きです。
ぶどう畑が首都に広がっている、これだけでもウィーンは緑が豊富な首都であることが解りますね。
新酒のワインといえばボージョレ・ヌーヴォですが、
画像提供元:Photo by Thomas Schaefer on Unsplash
一般的には「新酒」といえばフランスのボージョレ・ヌーヴォがよく知られています。
フランス南部ブルゴーニュ地方のボージョレ地区で造られる新酒ボージョレ・ヌーヴォは毎年11月の第3木曜日午前0時の解禁、であることは周知のとおりです。
でもボージョレ・ヌーヴォよりももっと早く新酒のワインを楽しんでいるところ、それがオーストリアなんですね。ご訪問の際はぜひお試しくださいませ。
最後に大事なポイントをもう一度。
- 日本では希少なオーストリアのワイン
オーストリア産のワインは生産量の約80%が国内消費。日本では希少なオーストリア産ワインの、その美味しさを現地で楽しんで下さいね。 - 新酒ワインを楽しむホイリゲ文化
新酒ワインは聖マルティン祭の日、毎年11月11日に解禁です。 - 季節限定でレアな2種の飲み物
「シュトゥルム」と「モスト」は現地に足を運ばないといただけないもの。
9月、10月に現地を訪問されたら、ぜひ味わってみてください。